文学・評論

【東大で話題沸騰!】『彼女は頭が悪いから』 著者: 姫野カオルコ 要約・感想

『彼女は頭が悪いから』 人物相関図

『彼女は頭が悪いから』人物相関図

『彼女は頭が悪いから』 あらすじ

『被害者の美咲は東大生の将来をダメにした
”勘違い女”なのか?』

横浜市郊外のサラリーマン家庭で
育った神立美咲。
都心生まれで高級住宅街で
官僚の息子として育ち、
現役で東京大学に進学した竹内つばさ。

2人は恋に落ちるが、次第につばさは美咲への
扱いがぞんざいなものになっていく。

やがて東大生5人による”猥褻わいせつ”事件となり、
被害者であるはずの美咲が、
東大生の将来をダメにした勘違い女だとして、
ネット、テレビで批判される。
現代社会に潜む病理を浮き彫りにした傑作。

『彼女は頭が悪いから』 プロローグ 本文抜粋

【和田サン、勘違い女に鉄拳を喰らわしてくれてありがとう】
逮捕された5人には、
和田という名前の学生はいない。
匿名掲示板への書き込みはもっと多数、
投稿された。
【世に勘違い女どもがいるかぎり、
ヤリサーは不滅です】
【被害者の女、勘違いしてたことを反省する
機会を与えてもらったと思うべき】
勘違い。勘違いとは何か?

『彼女は頭が悪いから』 第1章 要約

神立美咲は周囲の人よりも
自分が劣っているように
見えて、”劣等感”を感じていた。
家が普通のサラリーマンであったので
裕福な家を見ると自分が仲間外れに
されているような気持ちがしていました。

美咲は友人に、「連城健一がやっている
パドルテニスの大会に行かないか?
と誘われます」そこで須田秀に会います。

パドルテニスの大会で美咲に会った秀は、
美咲が周りの人とは何と違って見えたことに
魅力を感じ、彼女の祖父母が経営している
クリーニング店に手紙を出します。

日大附属鳩ヶ丘高校に通う
秀からの便箋を見た美咲は、
内容よりも先に「乾坤一擲」という
読めない四字熟語が書いてあったことに
流石は”ふぞく”だと感心をしました。

この手紙がきっかけとなり、
美咲と秀はグループ交際をします。
古風ともいえる健全な交際です。

大学受験が近づくと、
急に秀のほうから別れを切り出されます。
自分が「美咲の大学受験を邪魔したくない」
ことが理由でした。

秀を困らせたくない美咲は、
相手の負担になりたくなかったので
別れを承諾することを決心しました。

美咲は水谷女子大に入学します。
雨の日にバス停でバスを待っていると、
横浜教育大に通っている、
靴紐を結びなおしていた学生と、
ネイビージャケットの学生に会います。

美咲は2人に対して恋心の
ようなものを寄せていましたが、
積極的にアプローチをしませんでした。
後になって、水マユが靴紐と、
グレーパーカーがイノッチと
交際していることを知ります。
マユとイノッチは美咲の友達です。

2学期の期末試験の最終日。
最後の試験科目は公民でした。
つばさにはわからない問題は
ひとつもありません。

つばさは、ジョージというあだ名の
クラスの人気者から、
「まじめちゃん」「ゲリ便」と
揶揄からかわれていました。

つばさは、高校を卒業し、
東京大学理科Ⅰ類の大学生となります。
東大理Ⅰの男子という立場を得れば、
女性に困ることはありませんでした。

女性が近づいてきたら、
「東大というブランドに惹かれて、
自分に近づいてきている」と
自意識過剰なほどに思っていました。

『彼女は頭が悪いから』 第2章 要約

クリスマス・イブを、美咲は、
2組のカップルにはさまれて過ごしていました。
カップルのうち1組は、水マユと靴紐
そしてもう1組は、グレーパーカとイノッチ

水マユは、理科大の夜間に通っているのですが、
昼間のふりをしていました。
夜間に通っている人の中には、
昼間よりも偏差値が低いことを理由に
通っている人がいて、
そのような生徒と一緒に
されたくなかったからです。

それを見た靴紐が水マユ
を嫌なヤツだと思うと同時に、
かわいそうに思いました。
ホッて置くことができませんでした。
それから、よく会うようになり
付き合うことになります。

グレーパーカとイノッチは、
初めて会ってその日のうちに
肉体関係を持ちました。
2人は出会った日に運命的な出会いの
ようなものを感じてラブホテルに行ったのです。

美咲はクリスマス・イブに
一緒に過ごす相手がいなかったので、
美咲は店員さんに「いい飲みっぷりですね」と
話しかけられるほどに
ホットワインを飲んでから帰宅しました。

大学3年のクリスマス・イブを、
つばさは那珂なかいずみと2人で過ごしていました。
以前した会話の内容を覚えていなかったので、
いずみはつばさが自分のことを
大切に思っていないような気がしました。

いずみは、セックスしていたときにはつばさに
『いずみ』と呼ばれるのに、
『那珂』さんと呼ばれたことで
嫌な気分になります。

つばさは、すれちがう男からの妬みの視線を
浴びることができ、
快感を得ることができるので、
いずみと付き合っていただけでした。
そんな気持ちが態度に出ていました。

いずみはつばさとのことが、
一緒に歩きたくないほど嫌いになり
帰り際に別れを告げます。

それでもつばさは冷静で、
別れ際にいずみがヒステリックにならなくて
良かったと安堵していました。

『彼女は頭が悪いから』 第3章 要約

美咲は、正真正銘のすっぴんで、
水マユと横浜赤レンガ倉庫に向かいます。
そこで、つばさに会いました。

つばさは美咲のことを
チョロかわいいと思いました。
動作のいちいちが無防備であったからです。
情緒の成熟した男ならかえって臆してしまう、
美咲の触れなばちん無防備さに、
つばさは臆しませんでした。

2人はオクフェス会場を抜け出します。
美咲は気が付くと
ラブホテルに誘導されていました。
このホテルの一室で、少なくともこの夜には、
ほのかあたたかな恋が在ったはずでした。

2回目に美咲と会う時に、
つばさは待ち合わせ場所に日吉を選びました。
「ラブホテルが比較的空いている」
と思ったからです。

つばさにとって美咲は、
性の対象でしかありませんでした。
美咲もそのことに気づいていましたが、
つばさを困られたくないため
「ツーくんにとって私は何なの?」と
質問をしません。

和久田、國枝、譲治、エノキ、つばさは、
星座研究会という名前の飲み会を開催し、
そこに集まって来る女の子を利用して
お金稼ぎをしていました。

・動画を撮って資金にする
女子学生はM要員。
(MはmoneyのM)

・セックスを娯楽として
エンジョイする女子学生はS部隊。
(SはsexのS)

つばさから美咲のもとに2ヵ月間ぶりに
「飲みに行こう」という内容のメールが
送られてきました。

美咲は「相手に重たい、ウザイと感じさせない」
ように配慮に配慮をして、
【OK。久しぶりだね!】
と短い返信をしました。

『彼女は頭が悪いから』 第4章 要約

美咲はつばさが指定した居酒屋に向かいます。
和久田、國枝、譲治、つばさ、
美咲がオクフェスのときに会った
優香がいました。

この飲み会での自分の役割は、
「沢山飲んで皆を笑わせること」
だと美咲は思っていました。
なので、酔いつぶれるまで飲みます。

飲み会のあと、美咲は電車で家へと帰るつもり
だったのですが、
つばさにタクシーへと
押し込められるようにして乗せられ、
エノキの家に到着します。

和久田、國枝、譲治、えのき、つばさで
美咲が解けないような問題を
ワザと出してからかいます。
問題に答えられない美咲は、
さらにお酒を飲みます。

つばさがちょっとした悪ふざけのつもりで、
美咲の服を脱がします。
服を脱がしたことには性的な意味はなく、
ふざけてやったと言っても
許されるような行為だと思っていました。

そして譲治は、
美咲のスキニーデニムからパンティを抜きとり、
ドライヤーの熱風を陰部に当て、
割りばしを肛門に刺しました。

彼らの中で美咲がすると想定していた行為は、
顔を赤くしたり、
歯を見せて笑ってごまかして、
いやんいやんと身をよじらせること
」でした。
しかし美咲は、言葉が出ないほど
恐怖を感じていました。

美咲は隙を見て、
靴も履かずエノキの家を抜け出し、
公衆電話を使い、110番通報をします。
それから警察に保護されました。

美咲からの通報を受けて、
譲治は強制わいせつ容疑で逮捕されました。

世間の批判の的は、
被害者であるはずの美咲に向けられました。
美咲が東大生を狙っておきながら、
少し身体を触られただけなのに
被害者面をしていると思われたからです。

美咲の家に批判の匿名電話が連日かけられ、
美咲は人と話すことができないほどに
追いつめられます。

5人の母親は美咲と会い、
「何とか示談に持ち込みたい」と思っていましたが、
美咲に会ってもらえなかったことで、
怒る親もいました。

美咲から告げられた示談条件は、
東大を自主退学すること】でした。
譲治は示談条件を受け入れて
不起訴処分になります。

裁判の結果、
4人は執行猶予付きの有罪処分となり、
東京大学、東京大学大学院を
退学処分とされます。

「巣鴨の飲み会で、なんで、あの子、
あんなふうに泣いたのかな」
つばさは最後まで美咲が傷ついた気持を
理解することはできませんでした。

『彼女は頭が悪いから』 感想

この話は、
東京大学誕生日研究会レイプ事件」という
実際にあった出来事を
題材として書かれています。

逮捕された学生のその後について書かれていた、
記事を見つけたので読んでみました。
彼らはあまり反省していないようです。

事件を起こした仲間とも、
彼に紹介されて会ったことがありますが、
会うなり『ナンパ行かない?』
と言われて面食らいました。
当時の5人でSlackのプライベートな
プロジェクトを作っていて、
女性をどれだけ落としたか、
成果を報告しあっていましたよ」

東大生集団わいせつ事件の犯人たち、執行猶予のその後

つばさは、
「東京大学誕生日研究会レイプ事件」の
山田がモデルです。山田は今現在でも、
ツイッター上で”頭の悪い人間”を
見下す発言をしているそうです。