文学・評論

元彼の遺言状 新川帆立 要約・感想

『元彼の遺言状』 新川帆立 主な登場人物

剣持麗子…主人公。弁護士をしている。
思ったことをはっきりと言う性格。

・森川栄治…自分を殺した犯人には、
「自分の遺産を相続させる」と遺言を
書いた人。麗子の元カレ。

森川富治…栄治の兄。
栄治とは違い、顔がカッコよくない。
難病を患っていて、顔色が良くない。

篠田… 栄治を殺した犯人を
見つけてもらうため、
また、自分が栄治を殺したことにし、
栄治の遺産をもらうために、
麗子に代理人になってもらうように頼む。

原口朝日…栄治の元カノ。
栄治の付きの看護師をしていた。
愛嬌のある女性。

森川紗英…栄治の元カノ。
栄治とは「いとこ関係」にある。
麗子に対して、栄治のこんなところ
も知っているとマウントをとる。

森川雪乃…栄治の元カノ。
色白で、守ってあげないとと
思うような美人。現在は、
栄治のいとこ・拓未と付き合っている。

津々井…麗子の上司。麗子拘留されたとき、
麗子からの弁護の依頼を受け、
麗子を助ける。

堂上…獣医。栄治殺しの犯人。

『元彼の遺言状』 新川帆立 あらすじ

「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」
という奇妙な遺言状を残して、
大手製薬会社の御曹司・森川栄治が亡くなった。

学生時代に彼と3か月だけ交際していた
弁護士の剣持麗子は、
犯人候補に名乗り出た栄治の友人の代理人として、
森川家の主催する「犯人選考会」に
参加することとなった。

数百億円とも言われる財産の
分け前を獲得するべく、
麗子は自らの依頼人を犯人に
仕立て上げようと奔走する。

一方、麗子は元カノの一人としても軽井沢の屋敷を
譲り受けることになっていた。
ところが、避暑地を訪れて手続きを
行なったその晩、
くだんの遺書が保管されていた金庫が盗まれ、
栄治の顧問弁護士であった町弁が何者かによって殺害されてしまう――。

『元彼の遺言状』 新川帆立 起

話の主人公は、剣持麗子。
女性弁護士です。顔よし、頭よし、運動神経よし、
性格に難アリといった人物です。

麗子の竹を割ったような性格を
快く思わない人達により、
ボーナスを減給させられます。

ボーナスが減給されたことに腹をたて、
麗子は会社を辞める決意をします。

麗子は、会社をやめてから退屈します。
そこで、大学生のときに、
3カ月だけ付き合った
「森川栄治」にメールを送ります。
森川栄治のようなイケメンに、
癒されたい気分だったからです。

数日経ってから、麗子の元に、
栄治からメールが届きます。

そのメールの内容は、
麗子にとって驚くべき内容でした。

「栄治が亡くなった」という内容だったからです。
このメールは、栄治の身の回りの世話をしている人
から、送られてきました。

栄治がなぜ、若くして亡くなったのかを、
不謹慎だと思いつつ、知りたい麗子は、
栄治と仲の良かった・篠田という男に
連絡を取り、会います。

『元彼の遺言状』 新川帆立 承

麗子は篠田から、
栄治は「自分を殺した犯人に、
自分の全財産をあげること」を
遺言に記載したことを告げられます。

麗子は篠田の代理人となり、
栄治が死んだ原因を調べて欲しいと頼まれます。
また、篠田はお金も欲しかったため、
「自分が栄治にインフルエンザを故意に移し、
栄治を殺した」ことにする計画も企てていました。

最初は面倒な仕事を受けると、
後の仕事に支障をきたすと思い、
麗子は、依頼を引き受けようとはしませんでした。

しかし、麗子は栄治の資産を調べたところ
300億あることがわかります。

この大金を報酬で、半分でも手に入れば…と
欲が出ます。麗子は篠田の依頼を
引き受けることにしました。

『元彼の遺言状』 新川帆立 転

栄治の遺産を受け取るために、
麗子と篠田は犯人選考会に参加します。

犯人選考会というか形をとっているだけで、
実際には「新株主選考会」でした。

麗子は、自分が株主になったら、
どういうメリットがあるのかを
犯人選考会で話をし、一次選考を通過します。

栄治は元カノのリストを作成し、
それぞれに軽井沢の屋敷を与える
遺言を残していました。

麗子も大学時代に
リストの名前に挙がっていました。

犯人選考会から10日後、
麗子は、軽井沢の屋敷の土地を手に入れる
権利を得るために、
森川家の別荘に向かいます。

そこには、栄治の元カノ、
原口朝日。森川紗英。森川雪乃が遅れて来ました。

麗子は雪乃が来るのを待っている間、
栄治の兄である富治と、
『ポトラッチ』について、
話をしていました。

『ポトラッチ』とは、日本語でいうところの
競争的贈与にあたります。
お互いが相手からもらった
プレゼント以上のものを送り合い、
相手が自分の送ったプレゼント以上のものを
送れなくなった時点で、相手をルール違反とみなし
戦闘に至るというものです。

それから、栄治は昔、難病を
患っていたことを、麗子に話します。
生まれつき白血球が作れない病気です。

この富治の難病ですが、
栄治のへその緒を利用したことで、
症状を抑えることができました。

富治にとって、栄治の存在は、
『ポトラッチ』でいうところの、
大きすぎる贈り物のようなものでした。

栄治にとって負い目を感じていた富治は、
自分が持っている財産、相続権、持分、
そういうものを全部栄治にあげました。
だから、栄治は大きな財産を持っています。

別荘での件が終わったあと、
村山弁護士は、麗子を連れて、
自分の法律事務所に向かいます。

栄治の遺言を有効なものにするために、
遺言状の原本がなければならず、
今一度原本があるかを確かめる必要が、
あったからです。

法律事務所に着いたとき、
部屋は荒らされており、
栄治の遺言が入っていた金庫が
盗まれていました。

村山は落ち着くために、
煙草で一服しました。
その煙草には毒が盛られており、
村山は死にました。

麗子は、村山が死んでから、
栄治の死は、他殺によるものではなかったのか?
と疑いはじめました。

ここから、麗子は、
栄治を殺した犯人捜しをしていくことになります。

『元彼の遺言状』 新川帆立 結

栄治を殺した犯人は、獣医の堂上でした。
堂上には、亮という息子がいます。
その息子は、栄治の子供でした。

栄治は、亮が自分の子供だということを
知っていました。栄治は遺言状の中で、
亮に数100億のお金を贈与することを
書き記していました。

そのことを栄治は、堂上に伝えます。
それを契機に堂上は、
栄治に対して殺意が芽生えます。
堂上は屋敷に忍び込み、
塩化カリウムを静脈注射して栄治を殺しました。

堂上は、「亮が実は栄治の子だ」
ということを、世間に知られることを、
自分のプライドが許さなかったので、
真相を知っている村山を殺しました。

次に真相を知っている、紗英を
堂上は殺そうと企てます。

堂上が、紗英を殺そうとしていることに
気づいた麗子は、警察に通報をし、
紗英のマンションへ車で向かいます。

マンションの前に警察官はいましたが、
警察官は全く危機感がありません。

マンションの管理人を呼び、
マスターキーを使い、
管理人紗英の部屋に入ると、
麗子は不審者扱いされます。

紗英はマンションには不在で、
堂上に会うために品川埠頭へ
向かっている途中でした。

麗子は紗英に、「堂上が紗英の命を
狙っていること」を、電話で叫びます。

紗英の方はというと、呑気なもので
麗子の忠告を全く聞こうとはしません。

警察官は、麗子を不審者扱いし、
取り押さえようとします。

麗子は、警察官のスキをついて、
品川埠頭へ車を走らせます。
品川埠頭には、堂上と麗子がいました。

堂上の鞄に毒物があると推定していた
麗子は、堂上から鞄を奪います。

その後の展開ですが、
警察の調査の結果、
堂上の鞄から違法な毒物が検出され、
堂上は逮捕されました。
栄治の遺産の半分は、国庫に帰属し、
残りの半分は、亮のものとなりました。

麗子は、警察公務執行妨害などの罪で、
10日間、拘留されましたが、
津々井先生の計らいにより、釈放されました。

まとめ

ネタバレになりますが、
犯人が堂上先生だったことには、
驚きました。

栄治は、「堂上先生の子供は
自分の子供である」と
悪びれる様子もなく伝えたのですが、
栄治が堂上先生の妻と不倫をしていたことを、
公に公言しているあたり
倫理的に問題があると思いました。

堂上先生の子供・亮が、
DNA鑑定の結果、
栄治の子供とわかり、
栄治の遺産を半分引き継ぐとのことでしたが、
嫡出否認の訴え。自分が父親ではないと、
申し出ることは、
1年以内に行わないといけないので、
あの段階で、亮が栄治の子供とわかっても、
遺産を相続されることはないと思います。

自分のDNAと子供のDNAが一致していなくても、
子供の権利を守る理由から、
1年以内に父親でないと申し出ない限り、
その人が父親だと推定されることになっています。

子供が大きくなってから、自分と顔が違うから、
もしかしたら他の人の子供かもしれないと思い、
DNA鑑定をした結果、
自分の子供ではないことが判明した場合に、
養育費を支払わない人が出てくるのを
避けるためです。

栄治が遺した「僕の全財産は、
僕を殺した犯人に譲る」という遺言状は、
『公序良俗』に反し無効になるのかを、
次回は調べてみようと思います。

したっけね~☆彡